大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和51年(ラ)267号 決定

抗告人 鈴木京一

右訴訟代理人弁護士 大蔵敏彦

同 森下文雄

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

よって、判断する。

債権者が債務者の第三債務者に対して有する債権を差押(ないし仮差押)した場合において、第三債務者が民訴法六二一条に基づいて債務額を有効に供託し、その事情を執行裁判所に届出た場合には、債権者と債務者との間では債権者が取立命令によって債権を取立てたと同じ効力を生じ、執行債権はその限度で消滅するものと解される。したがって、仮差押の被差押債権について第三債務者が民訴法六二一条に基づいて債務額を有効に供託してその事情を執行裁判所に届出た後、仮差押債権者が債務名義を取得した場合、仮差押債権者は取立が終了していることを前提として、競合する債権者がある場合には配当手続の進行を求め、競合する債権者がない場合は所定の手続にしたがって執行裁判所から支払証明書の交付を受けて供託金の払戻を受ければ足りるのであって、供託金還付請求権をなお債務者が有しているものとして改めて国を第三債務者として供託金還付請求権について差押命令、転付命令を求めることは許されないものと解される。

以上のとおり、本件差押及び転付命令申請は結局これを却下すべきものと認められるから、原決定は結論において正当であって、本件抗告は理由がない。

よって、本件抗告を棄却することとし、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 外山四郎 裁判官 篠原幾馬 小田原満知子)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例